2020年3月22日日曜日

パリ協定、後ろ向き続出 温暖化ガス削減に温度差

■出典: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO57076770R20C20A3EA1000/

パリ協定、後ろ向き続出 温暖化ガス削減に温度差
米離脱、ブラジル・豪州も消極的

2020/3/22付
1513文字
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2020年から本格運用が始まった地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に背を向ける国が主要国で続出している。11月に正式離脱を控える米国のほか、かつて環境先進国だったブラジルやオーストラリアが消極姿勢を示す。日本も提出する温暖化ガスの削減目標について上積みを見送る見通しだ。国連は2月ごろから削減目標の提出を求める。各国の動きはにぶく、パリ協定は船出から試練を迎えている。
「今世紀半ばに温暖化ガス排出量を実質ゼロにできるか今年は節目の年だ」。国連のグテレス事務総長は9日の記者会見で強調した。1月には米中日、インド、ロシアなど主要国を名指しし温暖化対策の強化を求めた。
パリ協定に先行して1997年に採択された「京都議定書」は、先進国だけに排出削減を義務付けた。中国やインドなど新興国の排出量が増え、先進国の不満が高まり削減は滞った。反省を踏まえ、パリ協定は発展途上国にも排出削減を求めた。ただ、すでに各国の取り組みには差がある。
排出量2位の米国はパリ協定からの離脱を表明済み。1位の中国や3位のインドは再生可能エネルギーや低炭素技術の導入を進めるなどとする。「我々は新興国。先進国が先行して対策を示すべきだ」との立場で、率先して石炭火力を廃止するといった動きはない。
かつての環境先進国にも消極的な国がある。石炭などの化石燃料に経済を依存するオーストラリアだ。全土に拡大した山火事は気候変動が一因とみられ、化石燃料産業の縮小を求める声も出る。モリソン首相は「雇用が失われる」などと擁護する。島しょ国は批判を繰り返しており、オーストラリアは南太平洋諸国の盟主的な存在だったものの、温暖化対策を巡り亀裂を生んだ格好だ。
19年に森林火災が多発したブラジルも対策に及び腰だ。ボルソナロ政権は温暖化に懐疑的で、熱帯雨林アマゾンの開発を推進している。
対策に積極的なのは欧州連合(EU)だ。欧州委員会は1月、域内で温暖化ガスの排出を50年に実質ゼロとするために120兆円に上る投資を今後10年間で実施する計画を発表した。
欧州も一枚岩ではない。発電の8割を石炭に頼る主要国ポーランドは実質ゼロ目標への参加を見送った。1月に訪日した同国のクリティカ気候相は、小泉進次郎環境相に原子力や省エネ技術での協力を求めた。石炭火力に依存しながら脱炭素化する方法を模索しており、急速にかじを切るEUとは一線を画す。
各国の温度差は19年12月の第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)でも表れた。合意文書の記述を巡り、EUや島しょ国が削減目標の引き上げを各国に促す内容にしようと訴えた。ブラジルやインドなどが反対し、努力を促す表現にとどまった。
国連は削減目標の引き上げを求めている。パリ協定は地球の気温上昇を産業革命前の2度以内に抑える目標を掲げる。すでに各国が策定した削減目標を足し合わせても3.2度上がる。パリ協定が有効に働くためには、各国が20年中に提出する目標が意欲的なものである必要がある。
パリ協定のルールでは11月開催予定のCOP26の9カ月前までの削減目標の提出を求めていた。各国とも実質的にはCOP26直前まで遅れるとみられている。
小泉環境相は17日の記者会見で「日本の目標が国際社会に前向きに伝わることが大事」と述べた。日本は提出する削減目標について、新型コロナウイルスの感染拡大への対応に伴い時期は流動的ではあるものの政府決定する。石炭火力の廃止などを打ち出すことは難しく、目標の上積みも現状では厳しい。
各国の事情は異なり国際協調は簡単ではなく、合わせる努力を怠れば、すぐにでもパリ協定の実効性は失われる。
(塙和也、安倍大資)




有機太陽電池 寿命15倍 理研、ウエアラブルの電源に

■出典: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO57006570Z10C20A3MY1000/

有機太陽電池 寿命15倍 理研、ウエアラブルの電源に

2020/3/22付
581文字
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理化学研究所の福田憲二郎専任研究員や染谷隆夫主任研究員らを中心とする国際共同研究チームは、安定して発電する時間を従来の15倍に伸ばした有機太陽電池を開発した。光のエネルギーを電力に変換する効率も約13%と高い。衣服などに貼り付けて生体情報を集めるウエアラブル端末の電源として応用できるとみている。
エネルギー変換効率も13%と高い=理研提供
エネルギー変換効率も13%と高い=理研提供
福田専任研究員らが試作した有機太陽電池の厚さは、基板の高分子フィルムなどを含めて3マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと極めて薄い。
有機太陽電池は柔軟で軽いという特色がある半面、ガスの遮蔽が難しいなどの課題があり、これまでは長期間安定して高いエネルギー変換効率を維持できなかった。研究グループは発電層に使う材料の新たな組み合わせを見つけだし、素子の構造も改良した。さらに作製した後にセ氏150度の熱を加えると、性能が長期間安定することを発見した。
空気中で3千時間保管しても、同効率は約5%の劣化で済むことがわかった。これまでは約200時間で約5%劣化していた。
これまで10.5%だったエネルギー変換効率も約13%に高めた。有機太陽電池の中でもトップクラスのエネルギー変換効率と、長期間安定する性能を併せもった有機太陽電池になった。
軽くて曲面などにも貼り付けられる有機太陽電池は、ウエアラブルセンサーや柔軟な材料で作るロボットなどの電源になると期待されている。

2020年3月21日土曜日

脱原発を選んだドイツでCO2排出量が急増? 「致命的な誤算」を示す研究結果と、米国への影響

■出典: https://wired.jp/2020/03/21/germany-rejected-nuclear-powerand-deadly-emissions-spiked/


脱原発を選んだドイツでCO2排出量が急増? 「致命的な誤算」を示す研究結果と、米国への影響

2022年までに脱原発を決めたドイツに発生する隠れたコストを明らかにする研究結果が発表された。脱原発によって急増するCO2排出量と社会的費用の「致命的な誤算」を指摘するこの結果は、原子力エネルギーの行く末が混迷を極める米国に大きな教訓をもたらしそうだ。

power plant
最新の研究結果によると、原子力発電所の閉鎖で生じた二酸化炭素(CO2)排出量の増加と大気汚染の悪化に伴う社会的費用は、年間約120億ドル(約1兆3,000億)にのぼった。MICHAEL BOHNEN/500PX/GETTY IMAGES
世界中の人々が2020年代という新たな10年を迎える準備をしていた、19年の大みそかのこと。ドイツの電力会社であるEnBWの従業員たちは、ドイツ国内にわずかに残る原子炉のうちの1基を停止する準備をしていた。
フィリップスブルク原子力発電所の原子炉2基は、19年12月31日24時に運転認可期間が終了した。これらの原子炉がドイツ南西部の住民に二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギーを供給し始めてから、およそ35年が経過していた。
フィリップスブルク原発は、この10年にドイツで廃止された11番目の原子力施設となった。ドイツで稼働中の残り6基の原子炉も、22年末までに停止される。
ドイツ国民と原子力との関係は常に複雑なものだった。しかし1980年代半ばに発生したチェルノブイリ原発の事故後、ドイツ上空に放射能雲が流れ込んだことをきっかけに、緑の党が掲げる反原発政策に実現の兆しが見えてきた。
福島第一原子力発電所のメルトダウンが起きたあとには、ドイツにおける反原発のロビー活動は勢いを増し、何万人もの人々が原発反対を掲げてデモ行進を実施した。そして福島で生じたような災害を防いで市民を守るという名目のもと、ドイツ政府は国内すべての原子炉を廃炉にする法案をすぐさま可決させた。

「隠れたコスト」を突き止めた研究結果

ところが、非営利団体の全米経済研究所(NBER)が19年12月に発表した研究結果によると、ドイツの脱原発という判断は、多額の出費を伴う致命的な誤算だった可能性があるという。
経済学者はドイツの脱原発にかかる隠れた費用を明らかにすべく、01年から17年にかけて収集された大量のデータを分析した。この結果、カリフォルニア大学バークレー校、同サンタバーバラ校、カーネギーメロン大学の研究者たちは、原子力発電の大半が石炭火力発電所からの電力に置き変わったことで、CO2排出量が年間3,600万トン、すなわち約5パーセント増加したことを突き止めた。
さらに悲惨なことに、石炭燃焼量の増加によって、発電所の周辺で粒子汚染の悪化や二酸化硫黄排出量の増加が生じ、呼吸器や循環器の疾患による死者が年間1,100人増加することも推測している。また、CO2排出量と死亡者数の増加に伴う社会的費用は、総計で年間約120億ドル(約1兆3,000億円)に相当するという。
この研究論文によって、メルトダウンのリスクや放射性廃棄物の処理コストを考慮しても、脱原発には原発を稼働させておくためにかかる費用を数十億ドルも上回るコストが発生することが明らかになったのだ。
「世間の人々は原発事故のリスクや損害を高く見積もりすぎています」と、カーネギーメロン大学の経済学者で本論文の著者のひとりであるアクシャヤ・ジャーは言う。「発電所周辺の大気汚染のコストがかなり高くつくという事実に、人々が気づいていない点も明らかです。大気汚染は気づかないうちに生命を脅かすサイレントキラーなのです」

混迷する米国での原子力の行く末

ドイツが脱原発に向かう針路反転をすることはなさそうだが、この研究結果は米国に重大な教訓をもたらしている。米国では原子力の行く末がますます不透明になっているからだ。
1989年以前に建設された米国内の多数の原子炉は、その既定の寿命が急速に終わりに近づきつつある。また、現在建設中の新たな原子炉はわずか2基で、いずれも予算を大幅に上回っている。この費用超過は、それでなくても高い電力料金を高騰させることなるだろう。
米国の多くのエネルギー市場において、原子力は低価格で豊富にある天然ガスや、政府から手厚い補助を受けている再生可能エネルギーとの競争に悪戦苦闘している。そんななか、現在稼働中の原子炉の寿命を延ばす試みは、経済的・政治的な困難に直面しているのだ。
米国で州内すべての原発の段階的廃止を目指しているのは、カリフォルニア州のみである。しかし、電力会社の事業継続が困難になるという理由だけで、将来いくつかの原発が廃止されるかもしれない。そこで問題になるのが、米国内での原発を廃止すると、ドイツの場合と同様に、CO2排出量の急増を招くのかということだ。
世界原子力協会(WNA)の上級報道官ジョナサン・コブいわく、原発を廃止してもCO2排出量を増加させない唯一の方法は、石炭などの化石燃料を用いる発電所も同時に廃止することだ。「米国のように発電量の約3分の1が石炭由来である場合、石炭火力発電所よりも先に原発を残らず廃止するという選択は、環境保護の観点からするとどのレヴェルでも無責任です」とコブは言う。
国連は、世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑えるという目標のためには、原子力がエネルギーミックスの一部でなければならないとの声明を出している。19年に国際エネルギー機関(IEA)は、原子力エネルギーを現時点の水準に保っておかない限り、目標達成は「極めて困難になり、より費用がかかる」との見解を示した。

次世代原子炉が鍵を握る?

米国では原子力を競争力のあるエネルギーにするために、直接、あるいは「ゼロエミッションクレジット(Zero Emission Credit)」を通じて原子力発電所への助成金が交付されるようになるかもしれない。近年、イリノイ州やオハイオ州では政治家たちによってこのような制度が提案されているが、いまだ議論を呼んでいる。
「原発への補助金交付は、明らかに健全な産業の兆候でありません」と、エネルギー関連コンサルタント会社のコンチネンタル・エコノミクス社長で、原子力に関する論文をマンハッタン政策研究所に寄稿したジョナサン・レッサーは語る。
レッサーが原発への補助金交付の代替案として提案しているのが、再生可能エネルギー発電への補助金の削減だ。その目的は規制緩和されたエネルギー市場において、原子力発電がさらに競争力をつけることだが、一方で化石燃料発電に炭素税を課せばいいとする論者もいる。
いずれの意見にも反対派はいる。再生可能エネルギー発電を行う企業は補助金を減らされたくないし、化石燃料発電を行う側はCO2に値付けをされたくはない。
エネルギー問題を扱う非営利の研究機関ロッキーマウンテン研究所の共同創設者エイモリー・ロヴィンスは、原発への補助金交付はCO2排出量削減の最善策ではないと指摘する。彼の計算によると、原発への補助金をエネルギー効率化プログラムに振り替えれば、「間接的ではあるが、石炭火力発電所を閉鎖する場合よりもCO2排出量をかなり抑えられる」というのだ。
とはいえ、米国での核分裂への望みがすべて断たれたわけではない。米国内の古くからある多数の原子炉が廃炉になるとしても、20年代の終わりまでには、新たな小型モジュール原子炉(SMR)が実用化される見通しだ。
この新型原子炉は現行の原子炉よりも低価格で安全になる見込みで、政治的な観点から見ても発電以外に魅力的な複数の活用可能性がある。「CO2削減が最重要事項であるなら、何よりもまず小型モジュール原子炉を採用すべきです」とレッサーは語る。
しかしドイツと同様に、米国でもいまはまだ新たな原子炉の採用は容易には受け入れられないかもしれない。




2020年3月19日木曜日

火力発電も「脱炭素」探る 三菱重・川重が水素混合設備 技術磨きESG対応

■出典: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO56969730Y0A310C2TJ1000/

火力発電も「脱炭素」探る
三菱重・川重が水素混合設備 技術磨きESG対応

2020/3/19付



環境志向による火力発電への逆風を受け、日本の重工大手が次世代型の設備開発を急いでいる。三菱重工業は燃料に水素を混合できる大型設備を世界で初めて受注した。石炭のみを使った場合に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量を7割、天然ガスよりも1割減らせるという。川崎重工業も水素設備の商用化を急ぐ。投資マネーなどによる「脱炭素」の風圧が強まるなか、技術力を磨くことで事業存続の道を探る。
「石炭火力への世の中の風当たりは厳しい。今後、水素燃料でどう社会のニーズに応えていくかだ」。三菱重工の泉沢清次社長は危機感を募らせる。
三菱重工の子会社である三菱日立パワーシステムズ(MHPS、横浜市)は12日、水素を使う火力発電設備を初めて受注したと発表した。米ユタ州の電力事業者向けで、出力は約84万キロワット。受注額は300億~400億円とみられる。
45年に水素100%
水素は燃やしても水が出るだけでCO2を排出せず、「究極のクリーンエネルギー」とも呼ばれる。MHPSの新設備は通常、天然ガスを燃やして発電するが、2025年の稼働時には30%水素を混ぜてスタートする。
三菱日立パワーシステムズの高砂工場(兵庫県高砂市)内にある水素混合燃焼の火力試験設備
三菱日立パワーシステムズの高砂工場(兵庫県高砂市)内にある水素混合燃焼の火力試験設備
ガスのみを使った場合と比べて約1割、年間460万トンのCO2を削減できるという。これは東京都の約2.4倍にあたる面積の森林が吸収する量に匹敵する。技術改良を進め、45年までに100%水素発電に切り替える。
一方、川崎重工は天然ガスと水素の混合型の小型ガスタービンを開発した。神戸市で世界初となる市街地での実証実験を19年初めまで実施した。20年度からはゼネコン大手の大林組と組み、より効率を高めた新型タービンの実験を始める。
発電用ボイラー大手のIHIも石炭火力発電にアンモニアを20%混ぜることで、CO2を4%程度減らす技術の20年中の実用化を目指す。
火力発電をめぐる世界的な情勢は厳しさを増す。19年12月に開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)。各国は温暖化ガスの削減目標を引き上げることで合意した。特にCO2排出量の多い石炭火力は矢面に立たされている。
背景には、企業の環境保護などへの取り組みを考慮して投資先を選別するESG(環境・社会・企業統治)投資の拡大もある。金融機関などが化石燃料を扱う企業に対する投融資を中止するなどの「ダイベストメント」も進み、世界各地で火力発電の建設計画のキャンセルが相次いでいる。
海外勢は縮小へ
世界中で悪者扱いされる火力だが、東南アジアなど新興国では太陽光など再生可能エネルギーだけで電力需要をまかなうのは難しい。国際エネルギー機関(IEA)は今後のメインシナリオとして、火力発電は40年時点でも世界の発電量の約半分を占めると予想する。重工大手が事業になおこだわるゆえんだ。
ただ、現状の設備を売り込むだけでは立ちゆかない。各社は低炭素や省エネの技術力をアピールし、投資家などからの理解を得たい考えだ。日本は液化天然ガス(LNG)発電の比率が高い。燃料効率を高めるタービン技術などで世界に先行していることも強みだ。
三菱重工はMHPSの高砂工場(兵庫県高砂市)で7月、全長240メートルに及ぶ巨大な省エネ型の実証発電所を稼働させる予定だ。隣接地には水素混合技術の実証設備もすでに稼働させており、技術改良を進める。
川崎重工は従来型の火力の蒸気タービンについては絞り込みを急ぐ。東芝グループと組み発電能力で10万~20万キロワットの中型の製品を共同開発中。木材やごみを活用したバイオマス発電のプラントなど、再生可能エネルギーの需要を開拓する。
日本勢を横目に、海外の重工大手はいち早く火力事業のリストラにかじを切る。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は火力部門で大型のリストラを発表した。独シーメンスも火力発電機部門などの分社化を決めた。
一方、三菱重工は19年3月期で火力事業を中心とするパワー部門が、連結事業利益(国際会計基準)の約7割にあたる1328億円を稼いだ。成長分野に振り向ける資金を稼ぐ貴重なキャッシュカウ部門でもあり、簡単には縮小できない。19年末には、MHPSの事業から撤退する日立製作所の株式を取得すると発表した。シーメンスの事業買収を検討したこともあるなど「残存者利益」を狙っている。
野村証券の前川健太郎シニアアナリストは「『火力発電だから』と全てネガティブにとらえるのは行き過ぎだ。技術によっては競争力を発揮できる」と理解を示しつつも、「うまく省エネ型などに移行できるかがカギだ」と指摘する。脱炭素という世界的なうねりを前提に、革新的な技術を提案できるかが事業の存続を左右する。
(渡辺直樹、福本裕貴)

埼玉工業大学、再生エネ用の新型蓄電池を開発 実証実験を開始

■出典: https://univ-journal.jp/31156/

 2020年3月11日、埼玉工業大学工学部生命環境化学科 環境計測化学研究室の松浦宏昭准教授の研究チームは、再生可能エネルギーを高い効率で利用する研究・開発として、自然エネルギーの蓄電に適した「レドックスフロー電池」の実証実験を開始した。
 レドックスフロー電池は、電解液が電池セルと電解液タンクの間を循環する際に充電と放電を行うシステムで、電力貯蔵技術の一種。電極や電解液の劣化がなく長寿命であり、発火性の材料を用いていないので常温運転が可能なため安全性が高いなど、電力系統用蓄電池に適した特性を持つ。すでに大型蓄電システムや負荷平準化、非常用電源用システムに導入されている事例があり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を拡大していく上で必要となる系統の安定化技術として期待されている。
 埼玉工業大学は、2016年、大学創立40周年を記念してものづくり研究センターを設立。大学初となる「レドックスフロー電池」の1号機を導入し、3年間にわたり検証研究を行ってきた。今回、2号機となる新型のレドックスフロー電池を大韓民国のエネルギー関連企業(HI GROUP Energy & HVAC Co., Ltd.)との共同研究により開発、導入した。
 今回の実証実験では、埼玉工業大学ものづくり研究センターにバナジウム系レドックスフロー電池を設置し、学内に設置した太陽光パネルで発電した電力を蓄電し、夜間には放電して館内の照明に使用する。また、曇りの日など太陽光発電だけでは足りない場合は、レドックスフロー電池から自動的に放電を開始し、太陽光発電の電力と合わせて館内照明に給電する。
 この蓄電池システムが実用化されると電力の地産地消が可能になり、災害時の非常用電源としても有効活用が見込める。埼玉工業大学は、ものづくり研究センターのコンセプトである「環境にやさしい自然エネルギーの活用」を目指した方針に基づいた研究として学長の主導の下、レドックスフロー電池の実用化を目指す。


2020年3月18日水曜日

「女の子」の呪いを解く魔法は?

「女の子」の呪いを解く魔法は?
大手商社や保険業界2強に続き、メガバンクでも4月、初の理工系トップが誕生します。経営者も理工系人材が注目されている昨今ですが、中高生向けにIT(情報技術)・プログラミング教育を手掛けるライフイズテック(東京・港)の水野雄介最高経営責任者(CEO)に少し意外な話を聞きました。
同社のキャンプに参加する女子比率は4割。能力的な男女差は感じないものの、女子が開発したアプリの方が一般に評判がいい傾向があると言います。ダウンロード数ランキングの上位5人が全員女子だった年もあったそうです。「ニーズのとらえ方やデザインに長けている」点が、社会に受け入れやすい製品につながっているというのです。
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高校1年からキャンプに通い始めた羽柴彩月さんが、高2の時に開発した勉強をサポートするスマホアプリ「STUGUIN」もその好例。勉強を始め記録をスタートさせると、SNSやゲームはシャットアウトされて集中できたり、友人と通知し合うようにすれば刺激になったりと面白い工夫がされていて、15万ダウンロードを超える人気です。慶応義塾大学環境情報学部を卒業し、4月から大学院に進む羽柴さんは将来、ITエンジニアになるつもりだと言います。
ほかにも海外の大会で入賞したり起業したりと活躍の場を広げている女子たちもいます。「少し意外な話」と最初に言ったのは、理工系に進む女性がまだ少ない中で、こんなにも活躍している若い女性たちがいることに驚いたのです。
大学のリケジョは3割未満
実際、文部科学省の学校基本調査(2019年度)によると、大学全体では女子学生の割合は45%ですが、理学系は28%、工学系にいたっては15%となります。またITエンジニアに占める女性の割合も2割(情報サービス産業協会調べ、19年度)にすぎません。理工系の女性を採用したくても絶対数が少なく、他社との奪い合いでなかなか採用できないという会社社長の嘆きも聞きます。
理工系女子(リケジョ)が少ない要因について、昨年6月に公表された「男女共同参画白書」が分析しています。前提となった詳細な調査結果はここでは省きますが、子どもの時は理科好きが多く、理数系科目の学力不足でもないのです。周囲の女子の進学動向、親の意向、身近にロールモデルがいないことなどが、理工系分野で活躍するイメージを描きにくくしていると指摘しています。そしてさらに、こんな声もよく耳にします。
「呪いのせい」と表現するのは、30代の女性起業家。結果的には理系に進んだ彼女にとっての「呪い」のひとつが、学校の先生から「男子の方が理系科目ができるから女子は文系に行くべき」と言われたことだといいます。「呪い」とは言い得て妙で、悪意はなかったとしても受け手にとっては本来の姿を歪められかねないからです。リケジョの端くれの私も似たような経験がありました。ただし彼女より、かなり昔の話ですが……。
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とはいえ、今もこうした「呪い」は残っています。「下の子は女の子だからいいのよ、なんて言う母親がいまだにいるから」と憤るのは、IT企業に勤める工学系出身の40代女性。子どもの同級生のお母さんが、息子に比べ娘の教育を軽んじるのを聞くことがあるそうです。お茶の水女子大の室伏きみ子学長も「親や教員に子どもの頃から『女子は理工系に向かない』と言われるうちに、本人も無意識にそう思い込む『アンコンシャス・バイアス』も背景にある」と、日本経済新聞への寄稿で言及しています。その結果、才能ある芽が摘まれてしまっては、本人にとっても社会にとっても残念なことです。
無意識にせよ意識的にせよ偏見や思い込みにより歪められるのは、理工系の進路選択に限りません。18年には複数の大学医学部で女子や浪人生を不利に扱う入試不正が発覚。つい先日、採用選考で性別に関する情報の記載を廃止したユニリーバ・ジャパン(東京・目黒)が事前に行ったアンケート調査で、採用の書類審査時に性別によるバイアスがあったことが浮き彫りになっています。
男性も女性も縛る無意識の偏見
また日常的にも性別役割分業意識といった無意識のバイアスに男女とも縛られています。家庭で、学校で、職場で、政治や経済、社会、様々な場面で顔を出します。まずはバイアスに気づくところから始めませんか?性別ばかりか多様な価値観や文化を認め合えれば、各々がもっと自由に本来の力を発揮し、社会をより強く、多彩に活性化できるのでは。
幸いなことに、羽柴さんはそうした偏見には遭遇しなかったといいます。周りの友人たちも同様だと聞き、まだまだ「呪い」の残る社会であっても、それが取り除かれたところですくすくと伸びていく芽が楽しみです。前出の女性起業家のような人材も増えてきています。そんな強みを活かしている彼女たちの活躍が、また次につながる力にもなるでしょう。
社会が呪縛から解放されることを願いつつ、若い女性たち、女の子たちにはこの言葉を贈ります。Let it go!



2020年3月15日日曜日

森林大火災 「主犯」は温暖化 世界で多発 高温乾燥に拍車

■出典: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO56757070T10C20A3MY1000/

森林大火災 「主犯」は温暖化
世界で多発 高温乾燥に拍車

2020/3/15付

大規模な森林火災が世界各地で発生している。オーストラリアで2019年から続いていた火災は、日本の面積の3分の1ほどにあたる1260万ヘクタール以上が焼失した。森林火災があまり見られなかったアラスカやシベリアなど北極圏近くでも近年、多発している。地球温暖化やそれに伴う異常気象が拍車をかけているという見方が強まっている。
豪州で最も被害が大きかった南東部のニューサウスウェールズ州の消防当局は3月初旬、240日以上にわたり続いた火災が鎮火したと宣言した。ユーカリの木が林立する同州では540万ヘクタールが焼失した。山火事は例年発生するがその範囲は30万ヘクタールほどだという。今回の火災規模は18倍にもあたる計算だ。
「今シーズンは特に火災が燃え広がりやすい条件がそろっていた」。生態管理に詳しい横浜国立大学の森章准教授はこう説明する。延焼しやすい条件は高温と乾燥だ。豪気象局によると19年は観測史上最も気温が高く、平年より1.52度上回った。年平均降雨量も4割少なかった。
高温少雨の背景には、インド洋熱帯域の西で海水温が高温に、東で低温となる「インド洋ダイポールモード現象」の発生がある。東側で高気圧が勢力を強めて晴天が続き、熱風が豪州に吹き込んだ。
今回の火災の特徴は、豪州本土から海を挟むカンガルー島にも及び各地で多発したことだ。森准教授は雨を伴わない乾いた雷「ドライライトニング」が原因とみている。
この気象現象はまず、火災で発生した煙が上空で冷やされながら積乱雲などの雷雲に発達する。発達期から衰弱期に入ると強い下降気流とともに雷をもたらす。このとき雨は高い気温のために上空で蒸発し、雷が乾燥した大地に落ちる。これが次の火災を生むという仕組みだ。
ドライライトニングは森林火災が頻繁な米カリフォルニア州でも多く発生する。森准教授は「気候変動が顕著になれば乾燥した地域はより乾燥し、こうした極端な現象は増えるだろう」と予測する。
森林火災は北極圏でも増えている。世界気象機関(WMO)によると、19年6月からシベリアやアラスカで大規模で長期的な火災が少なくとも100件以上発生した。原因は高温だ。シベリアの19年6月の気温は1981~2010年の平均を約10度上回った(WMO調べ)。
シベリアやアラスカは温暖化によって永久凍土の融解が始まっている。ぬかるんだ湿地は落ち葉や植物が枯死した泥炭という土壌が多い。1年に数ミリメートルのペースで堆積し続けている。この泥炭が高温になると乾燥し、上部の針葉樹だけでなく土壌も合わせて燃やしてしまう。日本大学の串田圭司教授は「表面を消火しても燃え続ける場合もあり、消火しづらい災害となる」と解説する。永久凍土の融解も加速させてしまう。
単に燃えるだけではない。泥炭には温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)が大量に蓄えられている。堆積速度が年1ミリと仮定すると、10センチメートル燃えただけで100年分のCO2が大気中に放たれる。串田教授は、97~98年にかけてインドネシアで起きた大規模な泥炭火災で大気に出た炭素は1ギガ(ギガは10億)トンに上り、1年の世界のCO2排出量に換算すると15%に相当すると試算する。「温暖化が進行すれば各地で泥炭火災が発生しやすくなる」(串田教授)と警鐘を鳴らす。
森林火災の発生を予測できないだろうか。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は複数の人工衛星のデータを組み合わせ、火災の延焼しやすさを地図で表示する技術を開発中だ。豪州の火災では水循環変動観測衛星「しずく」などを使い、干ばつの状況を調べた。19年10~12月の3カ月の降水量に基づくと、特に東部で極端な乾燥域が広がっていたことが分かった。
地球観測研究センターの村上浩研究領域主幹は「火災が進みやすい方向や勢いなどを予想できれば対策を取りやすくなる」と話す。衛星による複数の画像を解析して火災で発生したすすを粒径の大きさなどから見極め、気流などの気象データと組み合わせる飛散予測も試みている。煙害の緩和に役立てるねらいだ。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「地球温暖化が森林火災の増加を引き起こす」と指摘している。陸上にいる種の3分の2以上がすむとされる森林は生物の宝庫だ。生態系が変わるほどの深刻な森林の焼失は人間社会への影響も計り知れないだろう。対岸の火事と見過ごさず日本も森林火災を減らしていく施策を打ち出していく必要がある。
(安倍大資)