2020年3月15日日曜日

ハリウッドの有名スターも続々発信。ヴィーガニズムが環境保全にもたらす可能性

■出展: https://forbesjapan.com/articles/detail/32952

ハリウッドの有名スターも続々発信。ヴィーガニズムが環境保全にもたらす可能性


2017年6月1日、アメリカのトランプ大統領は、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定から離脱すると発表した。この気候変動(Climatic Variation)に関する政策転換は、全世界に衝撃を与えた。

それから2年余りたち、これに反発するかのように、いまアメリカ国内では気候変動の問題を深刻に受け止め、いろいろな活動が起こっている。民間レベルからハリウッドスターを始めとする著名人まで、それぞれの立場から気候変動について世の中へ発信している。

ヴィーガンと気候変動の意外な関連


私自身、気候変動がどんなに大きな問題なのかと興味を持ち始めたのは、2年ほど前のことだ。ヴィーガンに関する情報を入手していたら、付随して気候変動の問題も入ってきたのだ。

では、ヴィーガンと気候変動の間にどんな関連があるのか。それにはまず、家畜の飼育が与える、次のような地球環境への影響が挙げられる。

1. 2018年の「Science」誌によると、世界全体で家畜の飼育のために使用されている土地の面積は、全体の83%に上るといわれている。2050年までに、世界人口は約100億人に達する見込みで、このすべての人口を養うだけの家畜を飼育できる土地は、その時点では残っていないという。

2. 家畜の飼育で使用される水の使用量は、例えば、牛肉1kgを生産するのに約1300リットルの水が必要と言われている。また、家畜の飼料となるトウモロコシ1kgの生産に必要な水の量は約500リットル。これらから派生する水質汚染が地球環境への問題となる。飼料用作物に含まれる抗生物質、ホルモン剤、肥料などが生活用水に流れ込み、環境破壊につながっていくからだ。

3. 家畜放牧のために森林伐採が実行されることで、温室効果ガスの吸収を助けるはずの森林が破壊され、有毒物質が大気中に膨れ上がり、気候変動の原因となる。

4. 家畜飼育により発生するメタンガス(牛や豚などが消化、代謝する過程で発するもの)や、家畜運搬により発生する二酸化炭素(石油やガソリン車から排出される)は、温室効果ガス排気量の大半を占めると言われ、気候変動をもたらす。

このように、家畜の飼育が、今後、地球環境や気候変動に重大な影響をもたらすとされている。その状況下で、肉や魚だけでなく、卵や乳製品まで口にしないという完全菜食主義のヴィーガンは、環境破壊や気候変動からこの地球を守るという意味で、新たな価値を提供するのではないかと思われる。これがヴィーガンについて情報を集めているうちに、私が行き当たった気候変動との関連だ。

ハリウッドスターたちの積極的活動


私が住むロサンゼルスのニュース番組を見ていると、エンターテインメントのニュースとは別枠で、地球環境や気候変動についての活動を積極的に行っているハリウッドスターたちが紹介されているのを日々耳にし、目にすることが多い。これらの問題に向き合う著名人たちの活動を、いくつか紹介しよう。

ホアキン・フェニックス
主演した映画「ジョーカー」が当たり役となり、2020年の映画批評家協会賞、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞すべてにおいて、主演男優賞を受賞したが、本人は完全菜食主義者で、今年の映画賞すべてにおいて、受賞後のディナーでは、ヴィーガンメニューのみが提供されたとのこと。

動物愛護の活動にも積極的に参加、アカデミー賞の授賞式のスピーチでも、地球環境へ意識を向けることの重要性を訴えていた。

レオナルド・ディカブリオ
実は熱心な環境活動家。2016年には、数名の監督とともに、環境破壊に関するドキュメンタリー映画をプロデュース、本人自ら出演もした。当時のオバマ大統領、テスラ創業者のイーロン・マスク、ローマ法王など、環境活動に積極的な著名人とのインタビューも話題となる。

1998年に設立した「レオナルド・ディカプリオ財団」では、絶滅危惧種の保護活動とともに、気候変動の活動にも積極的に取り組んでいる。2015年、世界中の環境保護団体に総額1500万ドルを寄付することを発表した。

ジェームス・キャメロン
映画「タイタニック」や「アバター」が記録的な大ヒットを生んだ、カナダ出身の映画監督。2012年より、自身の健康および環境への関心からヴィーガンとなる。気候変動への危機感を提唱しつつ、ドキュメンタリー映画の製作にも積極的に取り組む。

2005年にはカリフォルニア州内に、12年制の学校を設立。2015年よりこの学校で提供されるランチは、すべてヴィーガンメニューとなり、学校の設備自体も100%太陽光発電で運営されているという。

ビリー・アイリッシュ
今年のグラミー賞で、主要4部門を含む5部門を受賞。女性アーティストとしては初の快挙で、さらに最年少受賞ともなった。現在18歳の彼女は、ヴィーガンとしても有名で、その活動の範囲を広げている。

今年1月には、H&Mとのコラボで、持続可能な資源を使用したマテリアル(動物性由来素材は不使用)で自らデザインした、Tシャツ、帽子、ベルト、スウェットなどを発表。音楽以外にも、環境活動家として積極的に活動している。

ハリソン・フォード
「スター・ウォーズ」シリーズや「インディ・ジョーンズ」シリーズで有名な映画俳優だが、2019年には、国連気候行動サミット(Climate Action Summit)にも参加。

先ごろ出演したテレビ番組「Ellen Show」では、動物性食品を口にすることはほぼなくなったことを明かし、気候変動と真剣に向き合うときが来ていると、番組のなかでも熱心に語っているのが、ニュースでも取り上げられていた。

以上、ここで挙げた人はほんの一部。日本ではあまり知られていないが、アメリカ国内では有名な俳優、ミュージシャン、テレビタレントなど、まだまだ多くの人が、自分たちがいなくなった後、子どもや孫の代まで住み続けることができる地球環境を残すために、真剣に活動に取り組んでいる。

彼らのなかには、完全な菜食主義を実践している人もいるが、私自身は選択肢の1つとして考えたり、頭の片隅に意識として置いておいたりするレベルでも、十分に変化への1歩になるのではないか思っている。

温室効果ガスの排出をゼロにして、完全に止めることはできないにしても、加速を緩めるために何ができるか。その1つの方法として、ヴィーガニズムが推奨されるのは、ある意味、納得しうる事実であると、私は考えている。

全員がヴィーガンになることが最善ということではなく、個々の生活において、少しでもその意識を持つこと。そして1週間に1回でも、1カ月に2回でも、野菜だけ食べる日を設定してみたり、1日のうちの1食をヴィーガンにしてみたり、何かちょっとした行動を起こすことで、私たちの暮らす地球環境に貢献できることがあるのではないかとも考えている。

個人が一度にできることは小さいかもしれないが、たった1つの小さな行動が、多くの人を巻き込んでいくとしたら、それはとても大きな力を生み出すと、私は信じている。

地球環境のために、ヴィーガニズムを取り入れてみる。面白いアプローチではないだろうか。



2020年3月14日土曜日

「飛び恥」でドイツの鉄道利用が倍増、日本企業に好機到来の理由

■出典: https://diamond.jp/articles/-/231505

高速道路・車社会のドイツにおいて、今「鉄道移動」が流行している。2030年までに、運行回数と乗客数は、さらに2倍になると予測されている。一方で、ドイツの列車は遅延に次ぐ遅延が起きており、駅ナカも実に簡素だ。日本の列車や駅のような、利用客がわくわくするサービスや仕掛けを期待したいところだ。ドイツの鉄道事情は今、どうなっているのだろうか。筆者はドイツ在住の経営者で、大の日本好きだ。日本とドイツをこれまで40回以上往復している。こうした立場から、日本の優れた鉄道のノウハウや技術が、欧州に受け入れられる可能性がとても高い理由を考察してみた。(独ストーリーメーカー社 共同代表 ビョルン・アイヒシュテット)

環境意識の高まりから
ドイツの鉄道利用は増加の一途

 ドイツ鉄道は自社だけで5700カ所の駅を運営している。ドイツ鉄道が乗客数26億人を記録したことからも、これらが賑わっていることがわかる。15年前と比較して、ほぼ10億人増加しており、増加のトレンドは続いている。環境問題の議論の高まりを受けて、飛行機や車での移動ではなく、より環境にやさしい鉄道へと移動手段がシフトしているためだ。
 直近での「鉄道移動」ブームは、気候変動対策を強く訴える「フライデー・フォー・フューチャー」運動の中心人物であるスウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリさんに大きく影響されている。「温室効果ガスを多く排出する飛行機を使わず、鉄道を使おう」というグレタさんのポリシーに共感する若者が欧州で増え、飛行機で移動することは「飛び恥」と呼ばれるようになった。
 そうした中、フランクフルトやミュンヘン、ハンブルグなどの駅や鉄道は、今や毎日約50万人もの人々に利用されている。しかし、乗客にとってそこは必ずしも快適な場所とはいえないのが現実だ。
 問題は、清潔感の欠如や運航の正確さ、信頼性にある。ドイツ鉄道が発表している統計によると、74.9%の鉄道しか時間通りに運行していなかったという結果が出ている。ドイツでは「5分間程度の遅延は許容範囲」と認識されているため、その範囲内だと「時間通り」と見なされるにもかかわらずだ。
時間通りに運航する意識の欠如、チームワークではなく個人主義、プロセスを完成させるための方法が試行錯誤されていないことなど、原因は様々だ。

テクノロジーと「駅ナカ」
日本企業に2つのチャンス

「飛び恥」でドイツの鉄道利用が倍増、日本企業に好機到来の理由
ブームで利用客が増えるドイツの列車
 大きな原因の1つがテクノロジーの古さである。政府や鉄道会社もそれを把握しており、2030年までに1560億ユーロがインフラ投資される。そこで大きなビジネスチャンスを手に入れそうなのが、日本のテクノロジー企業である。なぜなら、鉄道やインフラ、監視システムなどは、日本製品のクオリティが他のどの国よりも高く、ドイツからの引き合いが見込めるからだ。
 日本がドイツにアドバイスできることは、他にもある。具体的には、時間の正確性、新しいビジネスのアイデアをもたらすことなどである。日本企業同士が協力し、こうした強みをドイツに対してアプローチするべきだ。ドイツの駅や電車は、日本の経験を必要としているのだ。
 問題は遅延に次ぐ遅延だけではない。駅構内が実に簡素で、利用客を魅了する仕掛けがないことが、2つ目の問題だ。朝イチの出張で何か食べるものを探しても、販売されているのはハムやチーズの乗った黒パンやプレッツェルといった、お決まりのメニューばかり。
 電車が遅れ、おいしいものも見つからない――。私はそんなとき、いつも日本の鉄道や駅が頭に浮かぶ。日本の鉄道や駅の素晴らしさを挙げたらきりがないが、列車運行の正確さ、列車内の綺麗さ、静かさは世界一と言っても過言ではない。
「飛び恥」でドイツの鉄道利用が倍増、日本企業に好機到来の理由
ミュンヘン中央駅の「駅ナカ」は、日本の駅と比べて簡素なイメージだ
 加えて、実に細かいところまで配慮が行き届いている。 新幹線を例にとると、各シートのテーブルの裏に列車全体のマップが描かれており、トイレの場所もすぐ把握できる。加えて、温かいコーヒーや駅弁、お土産まで車内販売で手に入る。
 日本の「駅ナカ」は、駅に行くこと自体を楽しくさせる工夫に溢れ、利便性もとことん追求されている。書店や雑貨店だけでなく、忙しい社会人が通勤途中にランチを買ったり、帰り道にお惣菜を買って帰ったりすることができるようなスーパーやコンビニまで充実している。すべてがSuicaやPasmoといった交通系のカードで決済できることも驚きだ。
 日本の駅ナカのワクワクするような世界観と鉄道インフラ技術こそが、欧州経済の中心地に必要とされているのではないだろうか。
 このように、最新テクノロジーや駅ナカの仕組みづくりで日本が強みを発揮できる可能性は高いが、海外から求められているのは製品やサービスそのものだけではない。全体としての「コンセプト」だ。
「製品ではなく、ソリューションを」は、近年しばしば耳にするキーワードである。日本とEUの間に結ばれた自由貿易協定も、日本の製品を以前よりも明らかに安価で欧州へ導入することを可能にしたばかりだ。その際、関連するサービスとの融合や準備なしでは、日本の美しい食やテクノロジーも中途半端のままに終わってしまう。完璧な鉄道システムや駅弁は、単にそれだけでは完結しないのだ。

日本食ブームで駅弁は絶好のチャンス
製品だけでなくコンセプトも輸出せよ

「飛び恥」でドイツの鉄道利用が倍増、日本企業に好機到来の理由
黒パンやプレッツェルといったドイツパンが、ドイツの駅で手に入る食事の定番
 たとえば2017年に、ドイツ鉄道がカールスルーエ駅にて試験的に実施し、ベルリン中央駅にも少しずつ広がりを見せている「ステーション・フード」と呼ばれるコンセプトがある。これは、乗客が駅の中でより本格的な食事を楽しめるようにするための諸々の取り組みを指すが、日本企業には、こうしたコンセプトをさらに発展させ、駅をトータル・コーディネートさせるノウハウがあるはずだ。
 欧州で日本食の人気が高まっているのも追い風だ。これまで「日本食」といえば寿司だったところが、ラーメンも浸透してきた。ミュンヘンやフランクフルト、ハンブルグなどにある日本食やラーメン店にも長い列ができており、ベルリンでは最初となる焼肉レストランも、予約が困難になってきている。日本食はトレンドになりつつあるが、「駅弁」のようなコンセプトはまだ知られていない。そうした日本食を、駅を経由して欧州市場へさらに浸透させることも可能なのだ。
 増加する列車利用も、相次ぐ遅延や退屈な駅ナカでは、一時のブームで終わってしまうかもしれない。今こそ、世界一ともいわれる日本の列車技術と駅の利便性、わくわくする駅の世界観をドイツや欧州に導入する絶好の機会といえよう。

EVによるCO2排出量削減の効果はどれぐらい!? 京都大学などの研究チームが調査結果を発表

■出典: https://www.axismag.jp/posts/2020/03/180286.html


京都大学の藤森真一郎 工学研究科准教授および広島大学の張潤森 助教らの研究グループは、将来の電気自動車の導入とそれによるCO2排出量削減の効果について、研究結果を発表した。
急速な普及を見せつつあるEV。これにより、将来的には自動車からのCO2排出量は大きく変わることが予想される。2015年のパリ協定では、地球の全球平均気温の上昇を2℃以下に抑え、温室効果ガスの排出を今世紀後半に実質ゼロまで下げることなどが、気候安定化目標として掲げられた。
しかし、それにEVがどのように貢献できるのかという問題は、これまで明らかになっていなかったそうだ。そこでこの研究では、EVの導入状況と交通部門以外の排出削減努力の進展度合いによって6通りのシナリオを設定し、コンピューターシミュレーションを実施。
その結果、EVの導入によりエネルギー消費量は減少するものの、発電システムが火力発電に依存する現状のままでは将来のCO2排出量はほとんど変わらず、全体としては正味で増加してしまうことがわかった。
さらに、仮に発電システムに再生可能エネルギーを大規模に導入したとしても、CO2削減は2割程度にとどまるという。
結局、気温上昇を2℃以下に抑えるというパリ協定の目標を達成するには、交通だけの取り組みだけでは難しく、家庭・産業・交通といったエネルギー需要全体、そして発電を含むエネルギー供給の脱化石燃料化といった社会全体での取り組みが必要ではないか、ということが明らかになったそうだ

■詳細
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/documents/200219_2/01.pdf



C&H Associate スタートです@2020.12.06

C&H Associate スタートです@2020.12.06

■活動内容
 温暖化対策を支援するプロジェクトマネジメント
(1)プロジェクトマネジメント(経営)
(2)プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)
(3)プロジェクト管理(進捗・コスト・リスク・スコープ・リソース)

超薄型の有機太陽電池ができた!変換効率1.2倍で寿命は15倍

■出典: https://newswitch.jp/p/21447

超薄型の有機太陽電池ができた!変換効率1.2倍で寿命は15倍
理研が開発
2020年03月14日

理化学研究所の染谷隆夫主任研究員らは、高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を持つ超薄型の有機太陽電池を開発した(写真=理研提供)。高いエネルギー変換効率と熱安定性を持つ素子を作製し、ポストアニール処理(後熱処理)を施した。従来よりもエネルギー変換効率が約1・2倍向上し、電池の寿命が15倍長くなった。衣服貼り付け型センサーなどのウエアラブルエレクトロニクスの軽量で柔軟な電源になると期待される。
東京大学と米カリフォルニア大学、豪モナシュ大学との国際共同研究。成果は米国アカデミー紀要電子版に、10日掲載される。
研究グループは、発電層を改良するために高エネルギー変換効率と熱安定性を併せ持つ「バルクヘテロ接合構造」の素子を作製した。また、発電層と正孔輸送層の界面の電荷輸送の効率を向上させるため、作製した素子を窒素下で5分間、150度Cで後熱処理した。エネルギー変換効率が13%に達し、厚さ3マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の超薄型有機太陽電池を実現した。大気中で3000時間保管した後も95%以上のエネルギー変換効率を保持できた。
超薄型有機太陽電池は基板や封止膜に薄い高分子フィルムを使っているため、気体の透過抑止性の確保が難しかった。
また、安定的に駆動するための発電層や電荷注入層の界面を制御できなかった。
日刊工業新聞2020年3月10日

2020年3月8日日曜日

SDGs起業家たち(4)あなたの1万円投資が救う 途上国の金融弱者

■出典: https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56320100T00C20A3EE1000/

あなたの1万円投資が救う 途上国の金融弱者 


SDGs起業家たち(4)

SDGs
 
SDGs起業家たち
 
経済
2020/3/8 2:03 (2020/3/12 2:00更新)
2840文字
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2019年7月、香港。若者による大規模デモが活発になっていた。街の喧噪(けんそう)をよそに会議室では、ベンチャー起業家にヒアリングしてまわる杉山智行(37)の姿があった。
「この調達方法であれば御社のキャッシュフローを改善できると思いますか」
「現在はまだ足元の商品ニーズを探っている段階なのが正直なところです」
成長が早い東南アジアでは数年後、どんなビジネスが成長しているかわからない。杉山は直接企業の状況を見て回り、次の貸付先開拓の芽を探っている。
■投資は1口1万円から
アフリカの未電化地域へのソーラープロジェクト、メキシコの女性達の経済的自立支援、ペルーのマルシェの活性化――。国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」への関心が高まるなか、個人がこうした事業に1口1万円から投資できる仕組みがある。杉山が創業したクラウドクレジットは、日本の投資家から集めたお金を途上国の事業に融資する「ソーシャルレンディング(貸し付け)」を手掛ける。
「世界をつなぐ金融」。クラウドクレジットが掲げるミッションだ。銀行融資では新興国の人口の20%にしかアクセスできないとされている。一方、経済発展が続く途上国では旺盛な中間層の資金需要に対応しきれない。「ソニーやアップルに貸しているだけでは社会はまわらない」。寄付ではなくリスクを負って高いリターンを求める投資を通じ、世界中の富の偏在を解消しお金の流れをつくる「第三の銀行」を目指している。
「世界をつなぐ金融」をミッションに掲げる
「世界をつなぐ金融」をミッションに掲げる
■金融工学に目覚める
「もともと起業家になりたかったわけではない。結果的に起業にたどり着いた」。そう話す通り、さまざまな巡り合わせが杉山を現在の道へと導いた。
高校生の頃は安全保障に興味があり、自衛隊を目指して防衛大学校を志望。だが高校3年生の1学期の終わりに校長から「生粋の自衛官よりも、例えば東大に入って人脈や知識を生かした新しい自衛官を目指したらどうか」と説得を受け、東大法学部に志望校を切り替えた。センター試験まで残り6カ月。高校2年生から理系クラスだったが、ポイントを絞って文系科目も猛勉強した。
合格して東大法学部に入るも、大学で目覚めたのは法律ではなく金融工学だった。大学4年生には金融工学を用いて保険商品の設計などをする「アクチュアリー(保険数理人)」の米国資格の初等試験に合格した。金融工学やトレーダー業務に関わる仕事を希望して、就職活動では外資系金融機関を中心に受けた。しかし、金融工学に詳しい法学部生という経歴が理解されず、うまくいかなかったという。
自らも現地に足を運び、新たなビジネスの種を探す
自らも現地に足を運び、新たなビジネスの種を探す
インターンシップへの参加をきっかけに当時の大和証券SMBCに入社した。最初はデリバティブの書類作成などの仕事だったが、数年後に社内ヘッジファンドで念願のトレーダーとして働くチャンスを得た。
だが、「恥ずかしながら『完敗』だった」。金融工学の知識でうまくいくほどマーケットは甘くなかった。理屈通りにいかないマーケットで勝つには、個人や企業、金融機関の間でどんな資金の循環がなされているのかを理解することが必要だと実感した。
転職も考えはじめ、海外リテール業務を扱うロイズ銀行東京支店(当時)に身を転じた。ロイズ銀行ではマーケットに関わる資金運用業務と、個人や中小企業の資金を管理する業務の両方に携わった。「想像以上に楽しかった」。個人や中小企業の資金需要の底堅さも肌で実感した。
今のクラウドクレジットのビジネスモデルの原型を思いついたのもこの頃だ。09年に東京支店のリテール預金事業の拡大を検討するプロジェクトがあった。杉山が提案したのは、国内で円預金を集め、資金需要が旺盛な海外で高い利率で貸し出すことだった。「世界をつなぐ金融を実現したい」との金融人としての夢もあった。
社員70人のうち15人がファンドを担当する
社員70人のうち15人がファンドを担当する
■海外銀行を経て起業
構想は実現しなかったが、一度芽生えた「世界をつなぐ金融」への思いは日に日に強くなる。「だったら自分でやってしまおうか」と創業を決意する。
起業後も順風満帆とはいかなかった。手痛い教訓として刻まれているのが、16年から組成したカメルーンファンドだ。累計12.7億円を投資し、元本の6億円は返済されたものの1.3億円は債務不履行、4.8億円に送金遅れが発生した。提携先の現地企業が取引量拡大に対応しきれず、審査が不明確になったり担保の回収が困難になったりする事案が続出したためだ。
「ふざけるな」「裏切られた」。中にはファンドの社会的意義やミッションに共感し、数千万円を投資した顧客もいた。杉山をはじめメンバーが謝罪してまわった。「社会貢献という枠組みで投資をするリスクや、体制を強化しないといけない」。カメルーンファンドの失敗は、ビジネスモデルを再構築する機会となった。
現地の提携先に任せていた審査や管理、回収業務も自社で手掛ける方向に転換した。現在70人の社員のうち、15人がファンドの担当者だ。以前よりもきめ細かく各ファンドや国の状況を把握することができるようにした。
海外のマイクロファイナンス機関と議論する様子
海外のマイクロファイナンス機関と議論する様子
■手に汗握らない投資を
クラウドクレジットでは日本の投資家から預かった資産を運用し成果を分配している。現在扱うファンドは40本超。うち13%程度がSDGsに関連する投資商品で、株式運用などと組み合わせた投資を勧めることで経済的リターンと社会的リターンの両方を追求するモデルを目指している。
現在扱う社会貢献型商品の一つが、メキシコの女性起業家支援ファンドだ。メキシコでは人口の半数にあたる約6000万人が預金口座を持っておらず、金融サービスが受けられない「金融弱者」だ。なかでも女性は土地や不動産の所有者でないために担保が無かったり、家庭を優先するとみなされ信用力が低かったりして、起業して生計を立てようとしても融資が受けられないケースも多い。地元の金融機関と組んで資金を提供し、自立支援や事業拡大に結びつける。
「手に汗を握らない投資をしよう」との言葉を掲げ、分散投資を促すセミナーなどの活動にも力を入れる。「事業への期待や共感で預けてもらえるのはありがたいことだが、扱っているのはあくまでもリスク商品。株式などへの投資と組み合わせて、一部を社会貢献型投資に預ける分散投資の方法を定着させていきたい」。SDGsの認知度が上がり、投資未経験者の割合も増加していることを受け、金融教育も大事だと感じている。
■会社設立から7年目、黒字転換の月も
会社設立から7年目を迎え、単月ベースで黒字転換する月も出始めた。現在社長として受け取っている役員報酬は年約600万円。ロイズ時代の半分以下で、市場調査などのために書籍を大量に購入するとクレジットカードの「リボ払い」をすることもある。高い報酬を得るのが目的ではないとはいえ、もう少し自身も社員の報酬も上げられたらとも思っている。
「運営側と投資家、どちらが欠けても世界をつなぐ金融は実現できない」。両輪の軸を太く育てながら、杉山はミッション実現に向けて今日も世界を飛び回る。
=敬称略、つづく
(佐藤初姫)

SDGs起業家たち(1) 人生を変える小口融資 100万円に救われた青年の起業

■出典: https://r.nikkei.com/stories/topic_DF_TH_20030200

SDGs(エスディージーズ)。Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、自分の子どもや孫、その先の世代が安心して暮らせる世界の実現を目指して、国連が17の目標を決めました。世界の企業や投資家を巻き込んだ活動が活発になっています。「社会貢献なんてきれい事」との冷めた見方はありますが、本気になって取り組む人たちがいます。SDGs起業家たちを紹介します。

■出典: https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56316300T00C20A3EE1000/


人生を変える小口融資 100万円に救われた青年の起業 
SDGs起業家たち(1)


SDGs(エスディージーズ)という単語やマークを一度ならず目にしたり、耳にしたりしたことがあるだろう。Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、国連が2015年に設定した。自分の子どもや孫、その先の世代が安心して暮らせる世界の実現を目指して、国連は17の目標を決めた。世界の企業や投資家を巻き込んだ活動が活発になっている。「社会貢献なんてきれい事」との冷めた見方があるのは事実だが、本気になって取り組む人たちがいる。SDGsビジネスの起業家たちを紹介しよう。
昨年1年間で飛行機に乗ったのは延べ150回。2月のある週は、深夜便で東京からバンコクに飛び、スリランカで会議。次はカンボジアに移動して現地経営陣とミーティングをこなした。そして、ミャンマーに飛んで現地従業員20人を前に課題解決のトレーニングを開いた。もともと飛行機は苦手だったが「最近は少し寝られるようになった」。座席はいつもエコノミーだ。
慎泰俊(シン・テジュン)が社長を務める五常・アンド・カンパニー。日本に本拠地を構えながら、カンボジア・スリランカ・ミャンマー・インドで、貧困層に少額のお金を融資する「マイクロファイナンス」を提供する会社だ。
マイクロファイナンスは金融口座を持てず、高利貸ししか頼れなかった途上国の貧しい人たちに生活向上の機会を提供する。顧客の多くは女性だ。衣服を手縫いで作っていた人はミシンを購入して生産性を何倍にもすることができる。商店を開いている人は幅広い商品を仕入れることでより多くの顧客を開拓できる。
各国社員を集め東京で開いた経営会議=五常・アンド・カンパニー提供
各国社員を集め東京で開いた経営会議=五常・アンド・カンパニー提供
■民間版「世界銀行」をつくる
アジア各国のマイクロファイナンス機関に出資して子会社化し、それぞれの企業の経営力を強化する。業界最低水準の金利を目指し、より安く使いやすいサービスを途上国の人々に届ける。この5年間で顧客数は50万人、融資残高は300億円を超すまで成長した。17年度以降は連結黒字になっている。
「誰もが自分で自分の未来を決めることができる世界をつくる」。慎の目標は民間版の世界銀行をつくることだ。今後、アフリカや南米にも事業を広げ、2030年までに50カ国1億人にサービスを届けることを目指す。
世界人口73億人のうち、金融機関に口座を持たない人は25億人以上にのぼるとの試算もある。マイクロファイナンスは金融アクセスが難しい人たちに生活向上の機会をつくる。慎のビジネスはSDGsの1番目の目標「貧困をなくす」に通じる。もちろん、慎のビジネスだけで貧困問題を解決できるわけではないが、慎は本気だ。
慎がマイクロファイナンスに携わるきっかけは2007年。米経済学者ジェフリー・サックスが書いた「貧困の終焉」に触発され、ブログで有志を募り勉強会を発足した。この勉強会はNPO法人「Living in Peace」に発展し、日本の投資家のお金をカンボジアに届ける、国内初のマイクロファイナンスファンドにつながった。慎はこの分野で起業すると決め、2014年に五常・アンド・カンパニーを立ち上げた。
モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て起業した
モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て起業した
■お金の力を痛感
必要な時に必要なお金を借りることができる。その大切さは慎自身がよく理解している。
朝鮮学校の教師を務める父の元に生まれ育った。朝鮮大学校を卒業した後、ファイナンスを学ぶため早稲田大学の大学院を目指し合格した。入学に必要なお金は家にはなかった。
父は在日コリアン社会で尊敬される存在である一方、自分や身内のために他人に頼み事をしなかった。しかし、父は家に帰り、100万円が入った封筒をポケットから出した。慎のためにどこかで頭を下げ、工面したお金だった。慎は進学した大学院の在学中にモルガン・スタンレー・キャピタルに入り、その後ユニゾン・キャピタルで働く。その100万円がなければ、金融のプロとして活躍する今の慎の人生はなかった。
マイクロファイナンスの借り手を集めたミャンマーの集会=五常・アンド・カンパニー提供
マイクロファイナンスの借り手を集めたミャンマーの集会=五常・アンド・カンパニー提供
日本国籍のない慎は日本のパスポートを持っていない。今年1月にダボス会議のために訪れたスイスでは入国審査に1時間かかった。日本国籍を持てばパスポートを巡る手間が省ける。それでも「人それぞれ持つハンディも、決意さえあれば乗り越えられると身をもって示したい」と、今のところ日本国籍を取るつもりはない。
それでも今までの人生は「なんで自分だけこんな境遇なんだ」と思うことの連続だったと慎は語る。家は裕福ではなかった。通っていた朝鮮中高級学校では生徒会長に選ばれた。素行に問題のある生徒とも向き合い、理不尽な上下関係、使いっ走り、カツアゲの悪習をやめさせようと努力した。金融を通じ、世界の誰もに機会の平等を届けたいとの思いは、たくさんの理不尽を乗り越えてきた慎の歩んだ道そのものにある。
ミャンマーでマイクロファイナンスの融資先と握手する慎社長=五常・アンド・カンパニー提供
ミャンマーでマイクロファイナンスの融資先と握手する慎社長=五常・アンド・カンパニー提供
会社は順調に事業を拡大しているが、曲折があった。最初に集めたチームは創業前に行き詰まり、解散を余儀なくされた。会計のプロやベンチャー経験者などが参加したが、意見対立を乗り越えられなかった。「経営者としての未熟さだった」。3カ月、1人で事業計画を練り直す中で「自分だけでは何もできない」と痛感し、新たなチームを再起動した。
五常は本社で20人の社員が働く。この1年でメンバーは2倍になった。途上国のマイクロファイナンスを手掛ける唯一無二の会社として、様々な経験を持つ人材が集まる。昨年夏に入社した高橋孝郎もその一人だ。直前まで世界銀行グループに勤め、開発金融の最前線で活躍してきた。
世銀では各国のベンチャー向け投資に関わり「起業家たちが情熱を持って社会課題に取り組むのを見てきた」。意思決定に時間がかかり、自分の関わる範囲が限られる大組織の仕事に物足りなさを感じるようになった。「今はスタートアップらしく、毎日やることが変わり、自分次第で組織も大きく変わる」。そんな日々に刺激を受ける。
「金融に携わる人間には規律が必要だ。彼はその規律がある」。五常に出資する一人、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)日本法人の社長・会長を務めた蓑田秀策は慎についてそう語る。「志を持って事業をする。そこが最近の起業家と違う」
■年収600万円 報酬には興味なし
社長としての年収は600万円。社内では慎よりも高い賃金の社員も多い。「何のために仕事をしているか明確にしたい」と、自分の報酬には特に興味を示さない。五常は資金調達のため2023年に株式上場を目指すが、慎が持つ株は創業後200カ月売却しないとしている。上場してもすぐに巨万の富を手にするわけではない。昨年慎が買ったものはノートパソコンと仕事に使うジャケット程度。会社に近い25平方メートル、築40年のマンションに暮らす。
モルガン・スタンレー・キャピタルで働く時から、ハードワーカーであるとともに、休日にはNPOを主宰し、常に社会を変えることを考えてきた。五常という社名の由来は、江戸時代の二宮尊徳が作った信用組合「五常講」にある。「経済なき道徳はたわ言であり、道徳なき経済は犯罪である」。慎はそんな思想を残した二宮尊徳の意思を引き継ぎ、日々の仕事を積み重ねていけば、世界の理不尽を金融で無くすことができると信じている。
=敬称略、続く
(松尾洋平)