出典: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65752390S0A101C2MM8000/
東芝、全国の再エネ卸売り 発電量一括制御 独大手と新社
- 2020/11/3付
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東芝は2022年にも、全国に分散する再生可能エネルギーの発電事業者から電力をまとめて買い取り卸売りする新事業に参入する。先行するドイツ大手と提携する。需給に見合った発電量をIT(情報技術)で一括制御し、電力価格の変動も低く抑えて発電事業者にかかるリスクを減らす。海外大手と組んでの参入例は初めてとみられ再生エネ導入が進みそうだ。
新事業は「仮想発電所(VPP、総合2面きょうのことば)」と呼ばれ、欧州などで展開が進む。独VPP大手のネクストクラフトベルケと共同で新会社を11月に設立する。ネクスト社は約1万の発電設備などを制御し電力を売買している。
新会社は発電量を予測したり、電力売買の助言をしたりする。東芝は新会社と協力し、再生エネ施設や蓄電池をIT通信網でつなぎ再生エネを買い集める。日本全国にある風力や太陽光発電の設備を持つ事業者に参加をつのる。
あくまでも「仮想」の発電所のため電力は原則として設備がある地域ごとに使う。蓄電池などを活用して電力価格の高い時間帯に再生エネを多く売るようにする。
今回のVPP立ち上げは政府の再生エネ支援の変更も見据える。現在は再生エネの発電コストの高さを念頭に、政府が電力を一定価格で買い取っている。22年以降に新設される再生エネ設備については市場での電力売却後に一定額を政府が上乗せする新たな補助制度(FIP)に移行する。
FIPの場合、発電事業者は電力を売るタイミングで収益が変わってしまう。また電力需給状況を監視する機関に事前提出した電力供給計画と実際の供給量がズレた場合は、追加費用が発生する。VPPは複数の発電事業者間で発電量を調整できるため供給計画と実績値に開きが生じにくくなる。価格変動リスクも抑えられる。
国内では菅義偉政権が温暖化ガスの排出量を50年までに実質ゼロにする政府目標を掲げた。再生エネ機運の高まりを追い風に東芝は30年に新会社を含むVPP分野で売上高400億円を目指す。
想発電所 再生エネ活用の「調整弁」
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▽…各地に分散した太陽光や風力発電、蓄電池などの設備を一括して制御し、あたかも1つの大規模な発電所のように機能させる仕組みを指す。バーチャル・パワー・プラント(VPP)とも呼ばれる。再生可能エネルギーの活用に向け、電力の安定供給のための「調整弁」としての役割が期待されている。
▽…再エネの普及を促すため2012年に始まった固定価格買い取り制度(FIT)では、大規模太陽光発電施設の場合、政府が約20年にわたって電力を一定の価格で買い取る。日照条件の良い九州では太陽光発電施設が集積し、発電量が電力需要を上回る問題が発生している。そこで政府は22年からは市場価格に一定額を上乗せして補助する新制度(FIP)に切り替える。
▽…FIPへの移行により、発電事業者は電力需給や価格の動向を見ながら、蓄電池を活用するなどの施策をとらないと、収益を上げにくくなる。また事前に提出した電力供給計画と実際の供給量がズレた場合は追加の費用が発生する制度も導入される見込み。発電事業者はリスクを軽減するため、各地の電力設備を束ねて大量の電力を取り扱うVPPを活用するとみられている。
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