2020年11月16日月曜日

20年電気代無料、EVを格安貸与 エネファントが進める「電気の地産地消」

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20年電気代無料、EVを格安貸与 エネファントが進める「電気の地産地消」




「ソーラーチャージャー付きカーポート無料設置」
「29歳以下の社員へEV貸し出し」

目標は「日本一電気料金の安い街」。エネルギーの地産地消を進めるため、ソーラー発電設備の無料・格安提供を地元密着で行っている「エネファント」(磯﨑顕三社長)をご存知だろうか。岐阜県多治見市にあるこの会社は、太陽光発電設備の設置事業を中心に、一般家庭・法人向け小売電気事業、EVによるレンタカー事業を展開しているベンチャー企業だ。

世界中で進められている環境対策への動きからじわじわと注目を集めているのが、再生可能エネルギーによる「地産地消」。その成功への鍵を探った。

地域から立ち上がるエネルギー改革 その課題は?


日本では、2016年4⽉の電⼒⼩売全⾯⾃由化以後も、従来の地域独占型の電力が中心のまま。さらに、2020年上半期の再生エネルギー比率は全体の23.1%と、全体の4分の1にも達していない。

地域で使う電力を「買う」電力から「地産地消」へと移行させることで、電気代は安くなる。地産の発電量が増えれば、発電事業者へ支払う発電料金が減る。また、電気代には電力会社が持つ送配電網の使用料金である「託送料」が含まれているため、もしも、作った電気を離れた場所に送らずにその場でためたり使ったりできれば、託送料は支払わなくても済むからだ。

再生エネルギーを活用するためCO2も削減できる。度重なる災害での停電対策としてもエネルギーの分散化は重要課題である。

だが、実は「地産地消」は単に太陽光発電や風力発電などの設備を増やしていくだけでは実現できない。再生エネルギーは火力発電と比べ、場所や自然の影響を大きく受け、発電量の管理が難しい。

電気は「生もの」と言われるように、その扱いは簡単なものではない。電気の使⽤量は需要の変化とともに⼤きく上下する。

電気がいつどのくらい必要かを予測し、 不足しないように、常に予想必要量の20%ほど多く発電しておく必要がある。使われるかわからない電気のために、常に余分に発電し続けなければならない。そして使われなかった電気はそのまま、余剰電⼒として消えていくことになる。

「地産地消」にはこれらの不安定要素を管理し安定化させていく必要がある。

創る・貯める・配る 「地産地消」のサイクル回す施策


現在、エネファントでは電気の地産地消実現のための3本柱となる事業を進めている。

〈電気を創る〉エネファント…再生可能エネルギー事業、太陽光パネルの販売・施工
〈電気を貯める〉働こCAR…EVレンタカー事業
〈電気を配る〉たじみ電力・とうのう電力…一般家庭・法人向け小売電気事業

「電気を創る・貯める・配るのサイクルを、しっかり回すことができれば、どこから手をつけても、地産地消に向かっていく仕組みになっている」と磯﨑社長は話す。

2020年9月26日、エネファントはこのサイクルを使い電気料金をなくす「20年間電気代タダの家『フリエネ』」を発表した。

屋根の上に太陽光発電システムを設置し、太陽が出ている時間にソーラーパネルでできた電気をそのまま使うと同時に家庭用蓄電池へ充電。さらにヒートポンプ技術を利用した電気給湯器でお湯をためておく。そして、「フリエネシステム」と呼ばれるエネルギー管理システムで、発電されない時間もためたエネルギーを使い、需要と供給のバランスを調整、管理する。

エネルギーを効率的に管理、使用することで、買う電力を最低限に抑え、余剰電力を電力会社や、他の契約者に売電することで設備費と利益を確保するといったビジネルモデルになっている。街全体ではなく家というミニマムなコミュニティでの地産地消ではあるが、20年間メンテナンス料を含む基本料金以外、電気代は一切かからないというサービス内容に驚かされる。

20代までの社員へEV=蓄電池を貸与 観光利用も視野に


「働こCAR」は、地方で暮らすのに必要不可欠な自動車維持の負担を減らすため、若者を雇用する企業が従業員への福利厚生の一環として、格安で自由に使える車を貸与するレンタカー事業だ。

日本創成会議が「消滅可能性都市」とした多治見市。都会への労働力流出を防ぐ、地元企業の人材不足対策として「働こCAR」は始まった。多治見に住みたいという若者を増やす施策としても期待されている。

この事業では災害時に非常用蓄電池として活用できるEVが採用されており、台数を増やすことで街全体の蓄電量を増やす役割も担っている。



ただ、「若者の自動車離れは想像以上で、自動車を保有したことがある我々にとっては格安と思える使用料も、若者には負担と感じるのでは」(ある企業の社長)という意見もあり、契約数をさらに伸ばしていくのがこれからの課題となっている。

「働こCAR」は多治見市の主催するビジネスプランコンテストで特別賞を受賞した経緯もあり、市としてもEVの導入拡大を積極的に進めようとしている。

多治見市の産業観光課担当者は、「若者向けの個人使用だけでなく、観光客が多治見市を訪れた際、使用できる移動手段のひとつとしての使い方など、観光方面からの導入について模索中」と話している。

無料カーポート設置は好評、工事の順番待ちも


災害時の電源供給基地を兼ねた、ソーラーチャージャー付きカーポートの無料設置は地域の企業に好評だ。

普段は従業員用の駐⾞場としてしか使われていない⼟地を、発電基地として使うことができれば、新たに⾃然を壊すことなく地産のエネルギーを増やしていくことができる。災害時の電力供給にも活用でき、屋根の下は臨時の避難所にもなる。避難所を市内各地に点在させることはコロナウイルスなどの感染症対策にもつながる。

設置している保険会社の社長も、「非常時の電源確保に加え、地域への貢献をアピールすることができる」とうれしそうに語っていた。

また、「災害時の使用を考えていることもあり、予想していたよりかなりしっかりしたもので、ウチが設置したものを見て別の会社からの問い合わせが数件あった」と先日設置を完了したばかりのタイル会社社長。

この無料のソーラーチャージャー付きカーポートについては2020年10月末現在、契約数170件で、設置済み件数は50件、設置工事待ちの状態が続いている。

災害時用のガレージとして多治見市の施設への設置の計画も進んでおり、「現在設置場所の検討に入っているところ」と市の環境課担当者は話している。

蓄電という課題クリアが成功への鍵


電気を創るといった視点からは順調に見える「エネルギーの地産地消」。電気をためる「蓄電」が大きな鍵となることが予想できる。

水力発電や風力発電などに比べて、太陽光発電は取り組むことができる地域を選ばない。しかし、夜間や曇りの日などは十分な発電量を得られなかったり、発電自体ができないといった欠点もある。

「地産」のエネルギーを安定管理するために、夜間の電力を補う蓄電池が重要になってくる。

EVについては、トヨタ自動車から協力の話があり、近く発売予定の小型EV導入が検討されているが、今後EV以外の蓄電を考える必要もあるのではないだろうか。


エネファントの磯﨑顕三社長

「多治見市での成功事例ができれば、他の自治体にも普及していく」と磯﨑社長が期待するように、街にいくつもの発電蓄電基地を作る動きは、今後の地域におけるエネルギー改革に大きな影響を与える可能性を秘めている。



















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