2020年11月22日日曜日

再生エネ普及へ蓄電池コスト減 安価な材料活用 東京理科大など高性能競う

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再生エネ普及へ蓄電池コスト減 
安価な材料活用 東京理科大など高性能競う 

2020/11/22付
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東京理科大の駒場教授の研究室はナトリウムイオン電池の研究を進める

東京理科大の駒場教授の研究室はナトリウムイオン電池の研究を進める

再生可能エネルギー普及のカギを握る業務用蓄電池のコスト競争力を高める研究が進んでいる。安価なナトリウムや鉛を使いつつ高性能化する技術が相次ぎ開発された。2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするために欠かせない。電力会社から電気を買うよりも安くできれば、再エネの普及に大きな弾みがつく。

太陽光や風力は天候によって発電量が大きく変化するため、作った電気を蓄電池などにいったんため、需給に合わせて電力網に流す量を調整する必要がある。

リチウムイオン電池はリチウムやコバルトなどの希少な材料を使うため高くなる。ひとつの解が安価な代替材料を使う高性能電池の開発だ。

東京理科大学の駒場慎一教授らは電気を蓄える能力がリチウムイオンを上回る「ナトリウムイオン電池」を開発した。ナトリウムは地球上に豊富に存在する。実用化すれば、リチウムイオン電池に比べて費用を1~2割安くできるとみる。

ナトリウムイオン電池は次世代電池の有力候補と目されているが、蓄えられる電気の量がそれほど多くなく、装置が大型で重くなりがちという欠点がある。駒場教授らは負極に使う炭素に微細な穴を無数に作ることで、電気を蓄えられる量を従来より14%引き上げた。駒場教授は「充電速度が速いため、さらに性能が上がれば大きく普及するのではないか」と話す。

古河電気工業と古河電池は自動車バッテリーに古くから使われてきた鉛蓄電池を大幅に性能向上させる技術を開発した。「バイポーラ型」と呼ぶ技術で、これまで正極と負極を別々に生産して電池に組み立てていたが、基板の表と裏に正極と負極を取り付けて一体生産するようにした。従来の半分ほどの大きさで同じ性能を発揮する。

2021年度に試験出荷を始める。鉛はもともと安価だが、さらに量を減らした。導入費用はリチウムイオン電池の半分以下になる見通しで、量産時は1キロワット時あたり2万~4万円を目指す。

リチウムイオン電池は発熱するため、空調を使った温度管理が必要で、間隔を空けて設置する必要がある。鉛蓄電池はこうした問題がなく、場所をとらない。

電気自動車(EV)向けの技術を生かし、電力貯蔵用でも価格破壊をもくろむのが米テスラだ。リチウムイオン電池の材料の見直しや内製化によって、製造コストの約6割削減を目指す。9月の事業説明会で、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「1キロワット時あたりのコストを現状よりも56%削減する」と説明した。

正極に使う高価な希少金属のコバルトの使用量を減らし、ニッケルを活用する。製造工程も一新し、コストを引き下げる。まず自動車用で実用化して量産し、電力貯蔵用に広げる戦略だ。

米調査会社ラックスリサーチによると、電力貯蔵用蓄電池の35年の市場規模は19年比で北米が25倍、中国と欧州がそれぞれ11倍になる見込み。日本と韓国を合わせた市場は6倍にとどまる見通しだ。同社の担当者は「太陽光発電システムの設置費用が相対的に高く、蓄電池の設置も遅れる」とみる。

日本は米国や中国に比べるとメーカーの規模が小さくて量産効果を発揮しにくいうえ、中間マージンの高さなど流通構造の問題もある。今後はこうしたコストを削減する努力とともに、再エネの発電設備の費用を下げる研究開発も必要になりそうだ。




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