2020年4月25日土曜日

再生エネ拡大にブレーキ

■出典: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58496020U0A420C2TJ2000/

再生エネ拡大にブレーキ
新設の発電能力昨年17年ぶり減 アジアなど支援策縮小

2020/4/25付
1431文字
[有料会員限定]
新型コロナの影響で洋上風力の開発も遅れる見通し=ロイター
新型コロナの影響で洋上風力の開発も遅れる見通し=ロイター
世界の再生可能エネルギーの供給拡大にブレーキがかかってきた。2019年に完成した再生エネの発電能力は17年ぶりに減少した。再生エネを普及させる助成費用がかさみ、アジアを中心に支援策が縮小した。新型コロナウイルスの感染拡大で発電用の資材の調達も滞り、20年以降さらに増設が鈍る恐れがある。温暖化ガスの排出抑制に向け、蓄電池の整備や資材供給元の分散化が必要だ。
「発電所を建設したくても慎重にならざるをえない」。ある再生エネ事業者は打ち明ける。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)がまとめた再生エネを使った電力の新たな発電能力(導入量)は19年は約1億7600万キロワットと、18年に比べ2%減った。
2000年代初頭に再生エネが普及し始めて以降、初めて前年比でマイナスとなった。落ち込みが目立つのは太陽光で、導入量は9768万キロワットと前年比2.5%の減少だった。
再生エネ由来の発電能力は03年から18年まで一貫して拡大が続いていた。地球温暖化への対策として利用を促すため、割高な発電コストを補う目的で再生エネで作られた電力を固定価格で国などが買い取るといった支援が世界で実施された。
コロナが逆風
その半面、普及に伴い官民の負担額が膨らんだ。日本は再生エネの買い取り費用の国民負担が2兆円超に及ぶ。アジアではこうした支援策の縮小の動きが相次いだ。中国は政府による事業者への補助金が削減された。日本も発電事業者から固定価格で電力を買い取る制度が、市場価格に補助金を上乗せする仕組みに変わる見通しだ。
再生エネ由来の新設電源は、アジア全体では前年に比べ12%のマイナスとなり、中国は前年比15%減と大きく落ち込んだ。日本は4割減だった。
20年も新設は停滞しそうだ。新型コロナの流行が再生エネの開発に逆風となる。発電用部材や装置の供給が滞るためだ。
風力発電機の世界最大手ヴェスタス(デンマーク)は、主要な製造基盤スペインで風車の羽根部分を作る工場など2拠点の生産を一時停止した。スペインのシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーも、同国に10カ所ある工場のうち6カ所で生産を止めた。
太陽光は世界のパネルシェアの7割を持つ中国企業の工場の稼働率が、2月に6割ほどに落ちた。現在は稼働率が戻っているが、世界的な輸送網の混乱の影響を懸念する声も多い。
開発1年遅れも
部品の供給が滞れば、新たな開発プロジェクトに影響を与える。洋上風力は冬に波が荒れると工事が難しいこともあり「最大で1年遅れるプロジェクトが出てくる」(風力関係者)。
投資マネーは環境負荷が重い石炭火力発電を避ける傾向が強い。「ESG(環境・社会・企業統治)重視の観点から今後も再生エネへの投資は活発に行われる」(BNPパリバ証券の中空麻奈氏)。ただ優遇策の縮小で、投資回収へのリスクから再生エネの新規開発が従来と比べ伸び悩む可能性もある。
再生エネ由来の電力供給の普及ペースが鈍ると、化石燃料からの切り替えも遅れそうだ。国際的な枠組み「パリ協定」に基づくCO2など温暖化ガスの削減目標の達成が困難になる。
再生エネ市場の拡大には、電力インフラの見直しが必要になる。世界的に送電線の空き容量が不足している。
発電した電気を貯蔵する蓄電池の利用拡大も必要だ。家庭や企業に広がれば、再生エネで発電する電力の「受け皿」が増える。大手電力による需給バランスの調整が容易になり、大規模停電につながる送電網への負荷の抑制が期待できる。


0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。