浮体式洋上風力安価に 日立造船が新工法、23年にも実用化
- 2020/4/9付
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日立造船は2023年にも洋上に風車を浮かべる浮体式の風力発電設備を実用化する。固定買い取り価格(FIT)でも採算に合うよう、建設費を従来より3割減の1キロワット当たり60万円に抑える新工法を開発した。浮体式を実用化できれば発電設備を設置できる洋上面積が広がり、遅れている再生可能エネルギーの普及につながりそうだ。
日立造船が製造する風車の土台部分(イメージ図)
洋上風力発電は基礎を海底に固定する「着床式」と、海底の固定部と洋上の風車の土台部分を係留チェーンでつなぐ「浮体式」に分かれる。日本には浮体式が適する深い海域が多く、設置できる海域面積は着床式の5倍とされる。
普及に向けた課題は建設コストだった。FITに基づく電力会社の買い取り価格は浮体式では1キロワット36円とされ、設計・建設コストを同60万円まで下げられれば採算が合うとされる。世界で初めて商用化したエクイノール社(ノルウェー)の洋上風力発電設備でも建設コストは80万円だ。
日立造船は洋上に浮き風車がのる土台部分の新工法を開発した。工期を短縮しコストを下げたという。形状も上からみて「Y」のような形として海面と接する面積を小さくし、揺れを抑えた。水深が浅い場所にも導入でき、保守費用などを減らせる。土台を製造する堺工場(堺市)の年産能力を現状の5倍の25基に引き上げる。
設計・建設に加え、将来は運転や保守まで手掛けたい考え。国内3カ所で事業化調査に乗り出した。それぞれ10メガワット級の風車50基の建設を想定する。浮体式の洋上風力発電事業で30年度に売上高1000億円を目指す。
国も洋上風力の普及を後押しする。事業化には20年以上の長期の海域の占有許可が必要だが、従来は一般海域で3~5年単位でしか認められなかった。
19年4月に施行された再エネ海域利用法により、国が指定する「促進区域」で30年間占有できるようになった。
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