2020年10月26日月曜日

日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言について

 出典: https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20201026.php

日本政府の2050年
カーボンニュートラル宣言について

2030年までの45%削減こそが必要

2020年10月26日

in English

公益財団法人 自然エネルギー財団は、本日、臨時国会における菅義偉首相の所信表明演説の中で、
2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現をめざす宣言をしたことを受け、

コメントを公表します。

日本政府の2050年
カーボンニュートラル宣言について
2030年までの45%削減こそが必要

菅義偉首相は、本日の所信表明演説の中で、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体として
ゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すこと」を宣言した。英国、ドイツ、フランスなど欧州各国、カナダ、ニュージーランドなど他の先進国は、昨年までに既にこの目標を決めている。
日本においても、昨年6月策定の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の中で決定
すべきものであった。


立ち遅れは否めないが、日本政府がようやくパリ協定実現に必要な長期目標を掲げたことは、
前進である。この間、気候変動イニシアティブ(JCI)に参加する多くの企業、また全国人口の
過半に達する自治体が、国に先がけて2050年排出ゼロを目標として掲げた。今回の政府の決定は、
こうした日本の非政府アクターの声が実現に導いたものと言える。

日本政府の方針が深刻な気候危機回避に貢献するものと評価されるためには、次の2点が必要である。

第1は、2030年までの削減目標、自然エネルギー導入目標の大幅な強化である。現在の2013年度
比26%削減という低い目標は、IPCC1.5℃特別報告書が提起した2010年比45%削減へ引き上げな
ければならない。またそのためには、自然エネルギー電力目標を45%程度に引き上げ、全ての石炭
火力発電をフェーズアウトすることが必要だ。
自然エネルギー財団が本年8月に公表した「2030年
エネルギーミックスへの提案」は、適切な政策を導入すれば、このレベルの排出削減とエネルギー
転換が可能であることを明らかにしている。2030年度に40%強の自然エネルギー電力を求める
提案は、既に多くの企業、自治体の賛同を得て広がっている。

菅首相は演説で「長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する」と述べた。
この言葉にたがわず、これまで「高効率」と称して推進してきた石炭火力も含め、完全なフェーズ
アウトを行うべきである。2050年カーボンニュートラルを標榜しながら、2030年削減目標を微修
正にとどめれば、本日の政府の発表は、国際的に評価されるものには到底なりえない。

第2は、2050年までに、自然エネルギーによって、電力のみならず、熱と燃料を含め全てのエネル
ギー利用を脱炭素化する戦略を確立する
ことである。世界的には、自然エネルギー電力を安価に
大量に供給できる時代が現実のものとなりつつあり、自然エネルギーから製造される水素と
Eフューエルにより、産業・運輸部門のエネルギー需要を満たすことができる展望が切り開かれて
いる。

脱炭素化を原子力発電の継続の根拠にしようとする議論があるが、高コスト化し、安全性の確保や
最終廃棄物処理に課題を抱えた原子力発電に依存することはできない
。また、火力発電の排出削減
対策としてのCCSの活用は、欧州などで失敗が明らかになった過去の政策である。

完全な脱炭素化の鍵は、北海道、東北をはじめ各地域に存在する豊富な自然エネルギー資源を最大
限に活用することであり、それを可能にする基幹送電網を構築することである。
自然エネルギー
財団では、太陽光発電、洋上・陸上風力発電を中心に、日本の脱炭素化を実現するエネルギー戦略
の策定を進めている。

温室効果ガス排出を実質的にゼロにした日本は、脱炭素社会を実現するだけでなく、エネルギー
自給率を大幅に高めエネルギー安全保障の向上した日本であり、年間10数兆円にも上る化石燃料の
輸入を必要としない日本である。

2030年の削減目標を引き上げ、高い自然エネルギー導入目標を掲げてこそ、今日の時点から、
脱炭素化にむけたビジネスモデルの転換を加速し、エネルギー転換にむけた国内外の投資を呼び込む
ことができる。排出ゼロに向け、企業が新たな脱炭素ビジネスの展開を競いあい、自治体が脱炭素の
地域づくりを進めれば、次の世代に持続可能な社会を引き継いでいくことができる。

日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言が、本当に評価できるものかどうかは、2030年削減
目標を大幅に引き上げ、それに必要なエネルギー転換を打ち出すかどうかにかかっている。

自然エネルギー財団は、脱炭素社会にむけた日本の転換を加速するため、必要な政策提言を続け、
広範な非政府アクターとの連携を強化していく。



0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。