出典: https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65480550W0A021C2MM8000/
成長へ技術革新 号砲 エネルギー政策抜本見直し
首相「温暖化ガス2050年ゼロ」表明
- 2020/10/27付
- 1174文字
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日本の成長力を左右する競争の号砲が鳴った。菅義偉首相は26日、温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を表明した。実現には官民で年10兆円超の投資が必要との試算もあり、壁は高い。カギを握る再生可能エネルギーの市場は中国など海外勢にシェアを奪われている。温暖化対策の方針転換を経済成長につなげるためにも日本発の技術革新が不可欠だ。(関連記事総合1、総合2、政治面、所信表明演説全文を特集面に)
首相は26日の所信表明演説で温暖化対策について「大きな成長につながるという発想の転換が必要だ」として、次世代型太陽電池などで「革新的なイノベーション」をめざす考えを強調した。「再生エネを最大限導入する」とも明言。来夏にまとめる次期エネルギー基本計画(総合2面きょうのことば)も再生エネの比率を大幅に高めるなど抜本的な見直しを進める見通しだ。
温暖化ガスを実質ゼロにする目標設定は欧州などが先行し、日本は後発組になる。世界で進む環境技術の覇権争いに乗り遅れて対策コストだけがかさむ事態になれば、経済の重荷になる。京都大の藤森真一郎准教授らは50年の経済損失が国内総生産(GDP)の1%近くの年7.3兆円になるとの試算をまとめた。
世界では既に中国が主導権を握る。太陽電池のシェアは首位から3位までを中国勢が独占。洋上などで拡大が見込まれる風力の発電機は、トップ5に欧米勢と中国企業が並ぶ。
出力が不安定な再生エネの普及のカギとなる蓄電池の次世代技術も各国が争い、中国大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が急速に存在感を増す。欧州では独ボッシュや仏ルノーなど400社・機関が「バッテリー連合」を設立した。
世界のマネーは既に脱炭素が主流で、石炭火力関連分野から投融資を引き揚げる動きが広がる。日本の3メガバンクや生損保も石炭火力向けの新規業務を原則停止する方針を打ち出している。
日本は環境マネーを呼び込む戦略的な投資が必要になる。東北大の明日香壽川教授らの試算では脱炭素の実現には官民で50年までに約340兆円が必要になる。1年あたり約11兆円の計算だ。
18年度に日本の発電部門の二酸化炭素(CO2)排出量は約4.6億トンで、6割を石炭火力が占める。電源構成比でみれば石油なども含めた火力全体は77%に達する。原子力政策が停滞する日本は再生エネをどれだけ増やせるかが勝負になる。
自然エネルギー財団は50年の排出ゼロから逆算した当面の目標として、30年時点で電源構成に占める再生エネの比率を40~50%に上げる必要があるとみる。実績は18年度で17%にとどまる。
梶山弘志経済産業相は26日の記者会見で水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力を例に挙げ「(政策を)総動員して対応する」と述べた。大容量蓄電池の量産支援などを念頭に実行計画を年末めどにまとめる。
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