英コンサルティング会社のウッドマッケンジーは8月19日、2030年の日本の電源構成に占める再生可能エネルギー比率が政府目標を上回る27%に達するとの予測を発表した。今後10年で風力発電や太陽光発電のコストが30%以上下がると想定。卸電力価格も安定的な推移が続き、政府が電気料金を高騰させずに支援策を展開しやすいと見込む。20~30年の太陽光、風力への総投資額は1千億ドル(約10兆5千億円)超と試算した。

 19年の電源構成に占める再生可能エネルギー比率は19%。政府が長期エネルギー需給見通しで示した30年度の目標は22~24%となる。ウッドマッケンジーは太陽光と風力だけで30年に18%以上を占めると予測した。

 一方、石炭火力もコストの低さから30年時点で33%と19年に近い水準を維持すると想定した。ガス火力は19年より約10ポイント低い28%でピーク対応の側面が強まると見通す。不確実性が高い原子力は30年に10%とした。

 再生可能エネルギーへの投資を巡っては卸市場価格との関係にも着目した。既に太陽光や風力の比率が55%に達した南オーストラリアでは価格が急落し、投資にも停滞が生まれると予測。まだ10%に満たない日本では影響が限られるため、比較的安定して推移すると見込んだ。

 20年の日本卸電力取引所(JEPX)スポット価格は、電力需要の低迷や燃料価格下落などが重なり低水準で推移してきた。ウッドマッケンジーでアジア太平洋地域の電力・再生可能エネルギー研究責任者を務めるアレックス・ウイットワース氏は、この状況が「日本にとって追い風」と指摘する。

 消費者が支払う電気料金を高騰させずに太陽光や風力の比率を引き上げられるとし、その実現に向けて「今後10年は政府の支援策が重要になる」との見方を示した。

 また、同社は日本の水素戦略も分析した。政府は再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」について、30年に1キログラム当たり3ドルへの低減を目指す。これには同社が予測した30年時点の太陽光と風力のコストをさらに37%下げる必要がある。

 30年に燃料電池自動車(FCV)80万台という目標達成も難しいと指摘し、化石燃料由来の「ブルー水素」輸入などあらゆる選択肢を追求することになると予想した。

電気新聞2020年8月20日